具体と抽象:世界が変わって見える知性のしくみ/細谷功
今回は、細谷功さんが書かれた
「具体と抽象:世界が変わって見える知性のしくみ」を紹介していきます。
私が感じた本書の要点としては、
「具体を好まず抽象の世界で生きろ!」と言われているように感じました。
ここまで極端なことは書き方はされていませんが、
仕事ができる人、頭のいい人はみな抽象の世界で生きている。
抽象的な考え方と具体的な考え方両方を使える。
逆に具体の世界で生きている人は、抽象の世界が分からない。考え方が理解できない。
そこから、コミュニケーションギャップ等が生じる。
あくまで一例ですが、こんな感じのことが書かれています。
細谷功さんのプロフィールは、以下のURLから確認できます。
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【人間の知的能力の「縦軸」と「横軸」】
本書の1番初めに出てくる下記の図が基本的な考え方です。
小さな正三角形が右の大きな三角形に変化していくのが、知の発展を表しており、
ここで「横軸」が知識や情報の量的な拡大で、幅が広くなればなるほど知識や情報の量が増加していることを意味していると語られています。
対して、「縦軸」が本書のメインテーマである具体と抽象の軸で、下から上に抽象度が上がっていきます。
知の発展のもう一つの側面は、私たちの知の抽象度が上がっていくということです。
横の蓄積についてはわかりやすいと思いますが、その横方向の拡大とセットになっているのが、「抽象具体」の上下運動なのです。
つまり、知識が増えれば、抽象化する能力が備わってくるといった感じでしょうか。
逆に言えば、知識ばかり増やしても抽象化する能力がなければ、
物事を俯瞰的に見ることも出来ないし、物事の共通点を見つけることも出来ない。
なんとなくの感覚で理解できます。
本書で書かれている「抽象化」を3つだけ抜粋すると
・「線引きをする」こと
何らかのルールや規則を作るときにも、こういう発想が求められます。
例えば、
補助金や税の優遇制度などを策定する場合には「年収○○万円以上・未満」という線引き
走行速度では「時速○○km以上はスピード違反である」といったような線引き
をする必要があります。
・「一言で表現する」こと
抽象化とは対象物に付随する様々な特徴のうち、ある目的に合致した特徴のみを抜き出すこと。
したがって、例えば100ページの資料を「一言で説明する」といった形で、何らかの膨大な情報量を短く集約して表現することも、抽象化の一つの側面です。
共通点を見つけたり要約したりする能力とも言い換えられます。
・「都合の良いように切り取る」
抽象化というのはある意味で(目的に合わせて)「都合の良いように特定の属性だけを切り取る」ことを意味しています。
→ディベートが強い人などは、この能力に長けているように感じます。
その「切り取る」という行為が前述した「縦の世界」の意味においてであり、
世の中でよく言われる「話を切り取る」というのとは少し違うことはおわかりでしょう。
世の中で頻繁に用いられる「話を切り取る」という表現は、一連の話の中の自分に都合が良い部分だけを抜き出すことを言いますので、
これはいわば「横の世界」での多くの情報量から一部の情報を選択的に取り出すことを意味しています。
一方、ここでいう抽象化の「切り取る」というのは、多くの属性の中から一部の属性を切り取るということで、それが「縦の世界」での切り取りを意味します。
→増やした知識を選んで適切な表現で相手に伝えられるということですね。
逆に本書で書かれている「具体化」を3つだけ抜粋すると
・「自由度を下げる」こと
抽象化とは自由度を上げることに対して、具体化は自由度を下げることになります。
つまり、選択肢や変数を絞り込んでいくのが具体化です。
なぜなら、具体化というのは問題解決の下流側であり、
いよいよ選択肢を少数に絞って、それを実行することが重要になるからです。
・「逃げ道をなくす」こと
具体化とは、解釈の自由度を下げることです。
つまり、「いかようにも解釈できる」という状態を回避させることが具体化のポイントといえます。
逆に言うと、抽象度の高い表現は「いかようにも解釈ができる=逃げ道を作れる」ことになります。
→前提条件を揃えたい場合は、具体的に定義を確認し合うことが大事
解釈の違い捉え方の違いは、後々トラブルになることが多い
そういう意味じゃなかったんですというお互いの不毛な時間を過ごすことを減らせる
これは減点主義、あるいは失敗が許されない組織において顕著に見られます。
減点主義の組織ではその成員たちは、常に失敗しないための逃げ道を作る(しかも表立っては批判がしにくい)言葉を選ぶようになっていくのです。
・「違いを明確にする」こと
抽象化が共通点を見つけることだとすれば、具体化は相違点を明確にしていくことです。
違いを探しにいこうとするというのは、自分やその属する世界を特殊だと思うマインドセットと表裏一体のものです。
→自分の考え方と違うと主張
この「全てが特殊で違うものに見える」というのは、本書でいう「横の価値観」とも合致します。
→横の知識の量が自分の固定概念となって邪魔することもある
知識とはある意味で違いを明確にすることであり(「両生類と爬虫類の違いは何か」とか、「ひらめとカレイの違いは何か」といった形で)、それは物事を具体的かつ詳細に観察することで成り立つものだからです。
≪世の中の多数は具体的思考?!≫
具体的にすればするほど理解できる人の数は増える。
したがって、多数派の人を相手にして「数を稼ぐ」必要がある政治や
「マス」メディアや、
ページビューを稼ぐ必要のあるネット広告や記事などは、
とにかく「具体的でわかりやすく」することが求められます。
→つまり、少数のニッチではなく多数派の大衆を相手にするもの
「具体派」の人はこのような川下側の価値観が全てだと信じているので、
「抽象=わかりにくい=悪」というステレオタイプから抜け出すことができません。
具体の世界しか見えていない人には実生活でどのように影響するのか、
問題解決の場面で例を挙げてみましょう。
問題解決といっても特別なことではなく、
私たちが生活を送る上で自然に日々行っている行為のことです。
例えば、仕事や日常生活で何らかの計画を立てたり、個別の課題に対処しなければならない状況などもまさに問題解決です。
この場合に、よくある「これまでの知識と経験に頼った解決方法」(つまり本書でいう「横の世界」の考え方です)に基づいて解決案を出すのであれば、
それは前例にしたがって、あるいは前にやった経験をそのまま用いることになるでしょう。
保守的な考え方をする人や組織によくある思考回路ですが、
とにかく前例に則る、あるいは過去の経験に則るというのは、
実は何か考えているわけではなく、思考停止に陥った解決策と言えます
(必ずしも悪いと言っているわけではありません)。
→具体側の人は、自分の知識をフルに使って、課題を解決するのではなく
過去の経験や前例から解決をしようとする
これでは独自のアイディアもないしだれにでも出来る作業になってしまうと思う
抽象側の人は、ある知識をフルに使って新しいアイディアや自分の考え方も混ぜて問題を解決しようとする
本文からの抜粋も含めて長々と書いてきました。
日々、なんか会話が噛み合わないなと感じていたことがものすごくすっきりした気分になる本でした。
具体的に解決することがものすごく楽で思考停止に陥ていることに気付かされました。
1回読んだだけでは理解が難しい部分も多々ありました。
みなさんもぜひ読んでみてください!
以上、参考になれば嬉しいです!